※本記事は2016年10月4日に米国で掲載されたブログ記事の抄訳を基にしています。

最初に公開した2016年5月におけるOilRig攻撃活動の分析以来、私たちはこのグループの新たな活動について監視を続けてきました。最近の数週間において、被害者に対して用いられるHelminthバックドアだけでなくClayslide配信文書も、グループが活発に更新していることが分かりました。そのうえ、このグループが標的とする組織の範囲は、サウジアラビア国内の組織だけでなく、カタール国内の会社やトルコ、イスラエル、アメリカ合衆国にある政府機関にまでも及んでいます。

拡大する標的対象

OilRig攻撃活動の背後に潜むグループは、MicrosoftのExcel文書を添付ファイルとするスピアフィッシング メールを悪用して、被害者に対するセキュリティ侵害をし続けています。一例として、下記の電子メールがトルコの政府機関に送られましたが、これは航空会社のWebサイトに関する新しいポータル ログインと称する疑似餌を用いていました。(なお、下図で使われている電子メールの送信者は詐称されている可能性があります。)

図1 トルコの政府機関に送られたフィッシング電子メール
 

ファイルusers.xlsが実行されマクロが有効になっている場合、下記のおとり文書が被害者に提示されます。

図2 悪意のあるHelminth XLSファイルの内容
 

まさにこれと同じ文書内容が、複数の国にある政府機関を標的としているHelminthサンプルとともに使われていました。その攻撃に関して下記のファイル名が目撃されています。

  • Help-Yemen.xls
  • xls

こうした実例のほかに、カタールの複数の機関が、今年はじめのHelmnithサンプルを運ぶスピアフィッシング攻撃の対象となっていました。これらの場合、悪意のあるマクロ コードを運ぶのに使われた文書は、受信側の組織を非常に限定したものでした。ある場合には、受信者とすでに関係を築いていたパートナー機関から送られていました。

ツールセットに対する更新

最近の数か月間、私たちはOilRigに関与する攻撃者が用いたマルウェアに対して多数の変更がされたことを突きとめました。過去5か月間で異なる亜種を4つ特定しましたが、各亜種は実行時に異なるファイル名をドロップします。これらの亜種は、ドロップされた際に下記のファイル名を使います。(FireEye社には、このマルウェアに社名が使われていることがマルウェア発見時に通報されました。)

  • vbs / dns.ps1
  • vbs / fireeye.ps1
  • vbs / dn.ps1
  • vbs / komisova.ps1

下記の時系列チャートは、各亜種の流行を示したものです。

ファイルusers.xlsが実行されマクロが有効になっている場合、下記のおとり文書が被害者に提示されます。

図3 時間経過に伴うHelminth亜種
 

上記の時系列チャートで分かるとおり、攻撃者は、2016年5月末にマルウェアのupdate.vbs亜種からfireeye.vbs亜種へと利用対象を切り替えました。さらに最近になると、upd.vbs亜種が発見されており、これは活発に開発されたもののように見受けられます。コメントをはじめとする痕跡がこの亜種の中に発見されていますが、それについてはこの記事の後半で詳しく考察します。これよりもさらに最近になると、komisova.vbs亜種が使われていることが判明しています。

亜種間でのVBScriptの変更

全体的に、ドロップされたVBSファイルにおける変更は、亜種間では最小限のものになっています。ここでおさらいですが、VBSスクリプトはHTTPを使ってリモートのサーバと通信する役割を担います。スクリプトはリモート サーバからファイルをダウンロードしては、そのファイルが入手可能な場合には実行に移る、ということを繰り返し試みます。次に、このファイルの出力は別のHTTPリクエストによってアップロードされます。また、ファイルはClayslideのExcel文書がドロップしたPowerShellスクリプトも実行します。

観測されている亜種間では、概して違いはわずかです。大きな違いは、使われているドメインとIPアドレスのように見受けられます。下記のURLは、各亜種が使っているものです。

update.vbs

  • hxxp://winodwsupdates[.]me/counter.aspx?req=
  • hxxp://go0gIe[.]com/sysupdate.aspx?req=

fireeye.vbs

  • hxxp://update-kernal[.]net/update-index.aspx?req=
  • hxxp://upgradesystems[.]info/upgrade-index.aspx?req=
  • hxxp://yahoooooomail[.]com/update-index.aspx?req=
  • hxxp://googleupdate[.]download/update-index.aspx?req=

upd.vbs

  • hxxp://83.142.230[.]138:7020/update.php?req=

komisova.vbs

  • hxxp://googleupdate[.]download/update-index.aspx?req=

2、3の注意点として、fireeye.vbs亜種の中に認められたものと同じURLをkomisova.vbs亜種が使っているという点も挙げられます。このドメインがごく最近のfireeye.vbs亜種の中にしか見られなかったことは指摘しておく価値があります。したがって、攻撃者がkomisovaへと切り替えている過渡期でfireeye.vbs亜種が使われた可能性が非常に高いと言えます。

upd.vbsをドロップするExcelファイルが、おそらく開発バージョンであることは以前に述べました。この主張を裏付ける証拠として、非標準ポートを使用しているIPアドレス接続がこのファイルで使用されていたという事実があります。このIPアドレスの特に興味深い特長の1つは、それが2015年の暮れにSymantecによって発行されたRemexiレポートに関連している点です。これは、これらの攻撃の背後にイランを拠点とする攻撃者がいると推測する前出の証拠と合致します。

図4 IPアドレスとRemexiの関係(PassiveTotalに示される)
 

upd.vbsの基盤となるコードは、他の亜種と比較すると、かなり整然としています。以下のとおりです。これは、それが積極的に開発されているというさらなる証拠を示しています。

図5 IPアドレスとRemexiの関係(PassiveTotalに示される)
 

upd.vbs亜種に見られるもう1つのマイナーな違いは、ダウンロードされるファイルの場所です。他の3つの亜種はすべて、ダウンロードしたファイルを%PUBLIC%/Libraries内にあるサブフォルダ内に配置します。しかし、この特定の亜種は、そのファイルを%USERPROFILE%/AppData/Local/Microsoft/Media/内にあるサブフォルダに配置します。

亜種間でのPS1の変更

VBSファイルと同様に、PS1ファイルもリモート サーバと通信します。VBSファイルとは異なり、PS1ファイルはHTTPではなくDNSを使用します。コマンドとファイルの場所は、リモート サーバによって受信され、実行されます。その後、これらのコマンドの出力は追加のDNSリクエストを介してアップロードされます。この発生方法の綿密な分析については、以前のOilRigブログ記事を参照してください。概して、dns、fireeye、komisovaのPS1亜種の間にはかなりマイナーな違いがあります。ただし、dn.ps1亜種は大幅に更新されているようです。これらの更新に加え、ファイルにはかなりコメントが加えられており、特定のファイルが積極的に開発されたというさらなる証拠を示しています。

図6 dn.ps1亜種の先頭部分
 

dn.ps1亜種は、次の特性を備えたDNSクエリを実行します。

上記のクエリでは、‘rne’コマンドがリモート サーバに、ダウンロード用に正常なファイルが使用可能かどうかを問い合わせます。使用可能な場合、サーバは‘OK’とレスポンスを返し、続いてファイル名を返します。この状況では、マルウェアは‘rd’コマンドを実行し、実際に対象のファイルをダウンロードします。

同様に、‘bne’コマンドと‘bd’コマンドでもそれぞれ同じ実行フローが見られます。この特定の動作はバッチ ファイルのみを検索します。マルウェアは、ファイルのダウンロード中に、データ ストリームの終わりを示す文字列‘EOFEOF’を探します。

‘u’コマンドは、提供されたファイルまたはスクリプトから生成されたデータをアップロードするために使用されます。データは、アップロードされるファイルの現在のバイト位置を保持する‘byte_position’変数を使用して、少しずつアップロードされます。

この特定の亜種を数日間実行したところ、ハニーポットとやり取りするように攻撃者を誘うことができました。Pythonスクリプトを使用して収集されたPCAPを解析し、以下の結果が得られました(簡潔にするため一部割愛)。

 

おわかりのとおり、攻撃者によって、リモートFTPサーバとの通信試行やさまざまな偵察コマンドを含め、多数の興味深いコマンドが受信されました。これらのコマンドは、一見ランダムな間隔でやってきました。それは、自動化されたシステムではなく、それらを発行している実際の攻撃者からのコマンドである可能性が高いことを示しています。

結論

HelminthおよびClayslideマルウェア ファミリを使用している攻撃者は、引き続き、カスタマイズされたマルウェアを使用して、世界中の高価値の企業や組織を標的にしています。このブログ記事で説明したファイルに見られたように、このマルウェアは、活発に開発されており、継続的に更新と改良が加えられています。導入されたマルウェアは恐ろしく精巧なわけではありませんが、多くの施設で気付かれずに留まることができるDNSコマンド アンド コントロール(C2)などの手法を用いています。

Palo Alto Networksのお客様は、次の方法で脅威から保護されています。

  • WildFireは、すべてのHelminthおよびClayslideのサンプルを悪意のあるものとして特定します。
  • コマンド アンド コントロール サーバとして識別されたドメインは、悪意あるものとしてフラグ付けされます。
  • AutoFocusタグのHelminthClayslideを使用して、このグループを追跡できます。

 

セキュリティ侵害の兆候

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