本ブログのオリジナル版は、Context: By New Americaで発表されました。

日本女性たちはいないの?

2016年10月に米国テキサス州にて開催されたIT分野の女性を対象にした世界最大の国際カンファレンス、Grace Hopper Celebration of Women in Computing に参加した私は、何度も自分にこう問いかけていました。

Grace Hopperのカンファレンス中、米国でコンピュータサイエンスやサイバーセキュリティを専攻している女子学生数十名とで話をしましたが、その半数は米国人学生であり、あとの半数は米国で勉強中のインド人留学生または中国人留学生で、卒業後は米国内でサイバーセキュリティ関係の職に就くことを希望していました。しかし、私の母国である日本から来た女性には出会いませんでした。

7年半前、私はジョンズホプキンスの大学院で国際関係と国際経済の修士課程に入るため米国に渡り、卒業後、フルブライト奨学生として日米のサイバーセキュリティ協力について研究しました。渡米前は防衛省で勤務し、大学院卒業後に国際安全保障関係の米国シンクタンク、日米のIT企業で働いた経験を持ちます。その間、サイバーセキュリティや技術系の海外の業界で働く日本人女性にはほとんど会いませんでした。

なぜなのか調べた結果、日本人女性がサイバーセキュリティ関連の仕事に就かない理由がいくつか見つかりました。しかし、女性がサイバーセキュリティ業界に入る重要性は、今まで以上に増しているのです。

第1に、人口統計学的背景があげられます。2004年以降、海外の大学・大学院に留学する日本人学生の数は減少し続けています。それには、1980年以降の日本の少子化も影響しているかもしれません。また、青山学院大学の小倉和夫特別招聘教授のように、日本が豊かになるにつれ、日本人が内向き志向になり、海外でフロンティアの開拓をしようとしなくなったと指摘する方もいます。

この人口統計学的現実の他、ジェンダーの問題もあります。2012年のOECDの調査によると、 国際平均値と比べて、日本の女子学生は卒業後、理工系やコンピュータ系の仕事に就く割合が低いのです。国際的平均値が5%近くなのに対し、日本と米国では3%あまりです。それに対し、理工系やコンピュータ系の仕事に就く男子学生の国際平均値は、18%です。日本では15%、米国では17%です。

2015年3月の日本の文部科学省の調査報告書によると、 ICT分野で働く日本人男子学生が 9.1%なのに対し、日本人女子学生の割合はわずか6%に過ぎません。ところが、日本で大学に行く女子学生の割合は44.9%であり、男子学生の40.0%よりも高いのです。つまり、日本では女子学生の方が技術系の仕事を選んでいないことになります。

米国、英国、フランスなど海外の国際サイバーセキュリティカンファレンスで日本人男性や(特に)日本人女性にほとんど会わないのは、こうした理由があるからと考えられます。その他にも、現実的かつ文化的な理由もあげられます。英語が母国語でない者にとって、英語で複雑かつ専門的な内容についてプロポーザルを書いたり、プレゼンテーションをしたりするのはきついことです。更に、日本文化で重んじられている和を乱すことになるため、日本の文化においては、意見の違いについて公衆の面前で指摘するのはあまり奨励されていません。私自身の経験から言うと、そのプレッシャーは女性に対して更に高くなっています。

こうした事情はなかなか目に見えませんが、サイバーセキュリティに関する国際的な議論において様々な知見を共有し、議論から学ぶ機会を日本は失っており、問題と言えます。しかも、日本がこうした国際的な対話に参加する必要性は、今まで以上に増しています。と言うのも、日本は2020年に東京五輪を主催することになっているからです。だからこそ日本は2015年にサイバーセキュリティ戦略を出し、2020年に向けて今後の3年間でいかに日本のサイバーセキュリティを高め、東京五輪の準備をするかについてビジョンを示したのです。同戦略の中には、サイバーセキュリティはグローバルな課題であるため、人材はグローバルかつ積極的な役割を担うべきとの指摘があります。但し、2014年時点の見積もりで、日本の情報セキュリティ人材の数は約 265,000名(そのうち160,000名は更なる訓練が必要)であり、不足数は約80,000名となっています。

世界中のあらゆる国と同様、日本はサイバーセキュリティ人材不足に悩んでおり、長期的に日本の安全保障に悪影響を及ぼす可能性があります。日本政府はそのリスクをよく認識しており、その課題に取り組んでいます。

だからこそ、サイバーセキュリティ人材を増やし、国際人材も育成しようとしている日本にとって、米国で今起きている多様化に関する議論を取り入れる必要があり、女性など、サイバーセキュリティ業界の少数派を雇用し、維持するためにどうしたらよいのか見極めなければなりません。官民が必要とされている変革を起こし、他国のベストプラクティスから学び、独自のベストプラクティスを作れるならば、日本はこの分野で国際リーダーになることができます。

国際的なサイバーセキュリティ人材に女性(そして男性も)がなる上での障害を除くのは、困難であり、一夜にして成し遂げられるものではありません。日本のサイバーセキュリティ人材がサイバーセキュリティに関する国際的な議論の場やカンファレンスに参加すれば、言語の壁や文化の違いに直面するでしょう。しかし、こうした議論へ参加すれば、長期的に日本とそして世界を助け、より安全安心な日本と世界にする上で役立ちます。

カンファレンスルームの少数派であることに恐怖心を感じる女性も(特に日本人女性)いるかもしれません。ミーティングで発言するのは勇気がいることです。しかし、サイバーセキュリティがますます複雑になり、国際的課題となる中、異なる文化や背景について語れる知見は議論にとって有益です。大使になって下さい。ご自分のコミュニティ、国、文化の人々のために道を作り、隔たりを埋めるのです。それにあなたは一人ぼっちではありません。私もいます。今度のカンファレンスで、願わくば同僚として、お会いしましょう。