※ 本記事は2018年7月18日に 米国で掲載されたブログ記事 の抄訳版となります。

 

EmotetおよびTrickbotは、Windowsベースのコンピュータを標的とした情報窃取マルウェアです。これらは、バンキング マルウェアとしても有名です。通常これらは、それぞれ別の悪意のあるスパム(マルスパム)キャンペーンを介して配布されます。しかし、当社は今回、単一の感染チェーンで両方のマルウェアを観測しました。このEmotetとTrickbotの組み合わせにより、脆弱なWindowsホストの危険は倍増します。

 

2018年が経過するなか、依然としてTrickbotは、独自のマルスパム キャンペーンによって送信されていますが、Emotetを別の配布手法として使用するTrickbotの例も引き続き観測されています。EmotetおよびTrickbotに関する多くの記事は、個々のマルウェアの特性に重点を置いており、成功している感染チェーンの全体像について説明したものはほとんどありません。

 

このブログ投稿では、2018年のこれまでのEmotetマルスパムを精査し、Trickbotに焦点を当ててEmotet感染トラフィックについて詳しく考察します。

 

類似性

 

EmotetおよびTrickbotは、異なるマルウェア ファミリですが、類似点がいくつかあります。どちらも、スパムやワーム ベースの拡散などの役割を果たす追加モジュールをロードできる情報窃取マルウェアです。また、昨年ごろには、どちらのマルウェアも最初の感染ベクトルとしてMicrosoft Word文書を使用するマルスパムを介して配布されていました。

 

Emotet

 

Emotetは、バンキング マルウェアとして2014年夏に初めて報告されましたが、以降進化しています。2017年には、さまざまな情報源でEmotetがDridexなど他のマルウェアのローダーとしての役割を果たしたことが報告されています。ある情報源によると、TrickbotをロードするEmotetが報告されており、今回の組み合わせに前例があったことがわかります。

 

2018年、Emotet感染トラフィックで、通常のフォローアップ マルウェアとして、IcedIDバンキング トロイまたはZeus Panda Bankerが明らかになりました。2018年6月から、私はフォローアップ マルウェアとしてTrickbotを伴ったEmotet感染トラフィックの例について投稿を開始しました。また、フォローアップ マルウェアとしてスパムボット マルウェアも観察されており、この場合、感染したWindowsホストは多数のEmotetマルスパムを送出します。

 

現在のEmotetの感染は、Word文書内の悪意のあるマクロから始まります。マクロは、Microsoft Officeではデフォルトで無効に設定されています。ユーザーがセキュリティ警告を無視して、脆弱なWindowsホスト上でマクロを有効にすると、悪意のあるWord文書が感染チェーンを開始します。これらのマクロは、侵害されたサーバーからEmotetマルウェアを取得して、被害者のコンピュータに感染するよう設計されています。

Emotetをプッシュするマルスパムは、以下の2つの標準的な手法のいずれかを使用して、最初のWord文書を配信します。

 

  1. 被害者が、電子メールのリンクから最初のWord文書を受け取る。
  2. リンクのない受信者の電子メールにWord文書が直接添付されている。

 

図1: 2018年の現時点までのEmotet感染チェーン

 

Trickbot

 

Trickbotが初めて観測されたのは2016年秋で、最初は、認証情報窃取マルウェアであるDyrezaの後継と説明されていました。Trickbotは、モジュール型マルウェアで、電子メール スパマーなど他の機能も有しています。最も注目すべき機能は、横方向への展開です。2017年7月までは、Trickbotには、SMBベースのワーム拡散モジュールが追加されていましたが、エクスプロイトは含まれていませんでした。

 

2018年6月以降、私はmalware-traffic-analysis.netSMB拡散を伴うTrickbot感染トラフィックの例について投稿し、Trickbotが感染したWindowsクライアントから脆弱なActive Directory (AD)ドメイン コントローラに侵攻することを指摘してきました。TrickbotのSMBにおける横展開は、2017年に指摘されたWannaCryのEternalBlue実装とは明確に違うため、この手法によるSMB拡散は、Trickbot作成者が開発した別のエクスプロイトをベースにしていると思われます。

 

Trickbotは、通常独自のマルスパム ベースの配布チャネルを持っていますが、現在のTrickbot攻撃者は、Emotetも使用して感染拡大を図っています。

 

Emotet配布

 

2018年6月11日月曜日から始まる一週間で、Emotetをプッシュする、米国国税庁(IRS)をテーマにしたマルスパムが米国の受信者に大量に送信されたことを観測しました。使用されたテーマはIRSだけではありませんが、このテーマが突出して目立っていました。2018年7月4日までの数日間には、Emotetをプッシュする、独立記念日をテーマにしたマルスパムが米国の受信者に送信されたことも観測しています。

 

以下は、2018年6月11日以降の最新のEmotetをプッシュするマルスパムで観測された、なりすましの送信者および件名のいくつかの例です。

 

なりすましの送信者

  • From: [さまざまななりすましの送信者名および電子メール アドレス]
  • From: Internal Revenue Service <[なりすましの電子メール アドレス]>
  • From: Internal Revenue Service Online <[なりすましの電子メール アドレス]>
  • From: Internal Revenue Service Online Center <[なりすましの電子メール アドレス]>
  • From: IRS <[なりすましの電子メール アドレス]>
  • From: IRS <irsonline@treasury.gov> <[なりすましの電子メール アドレス]>
  • From: IRS <Press@treasury.gov> <[なりすましの電子メール アドレス]>
  • From: IRS <Transcript@treasury.gov> <[なりすましの電子メール アドレス]>
  • From: IRS Online Center <[なりすましの電子メール アドレス]>
  • From: IRS.gov <[なりすましの電子メール アドレス]>
  • From: Intuit <[なりすましの電子メール アドレス]>
  • From: Intuit Online Payroll Support Team <[なりすましの電子メール アドレス]>
  • From: Intuit Payroll <[なりすましの電子メール アドレス]>
  • From: Intuit Payroll Services <[なりすましの電子メール アドレス]>

 

件名:

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  • Subject: Pay Invoice
  • Subject: Payment
  • Subject: Payroll Tax Payment
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これらの各電子メールには、Word文書が添付されているか、または、Word文書をダウンロードするためのリンクが含まれていました。

 

図2: マルスパム内のリンクを介して配信されたEmotet Word文書

 

図3: 添付ファイルとして配信されたEmotet Word文書

 

Emotetのレベルは2018年5月に急上昇し始める

 

Autofocusは、過去1年間のEmotetマルスパムの増加傾向を示しており、2018年5月にEmotet Word文書が急増し始めています。以下は、リンクまたは添付ファイルを介してEmotetとして確認されたヒット数のグラフです。リンクのヒット数は、Emotet Word文書をダウンロードするURLへのリクエストが確認された回数です。添付ファイルのヒット数は、Emotet Word文書がメッセージに添付されていることが確認された電子メールの数です。

 

図4: 2017年5月~2018年5月のEmotet Word文書のヒット数

 

図5: 2018年5月のEmotet Word文書のヒット数

 

Active Directory環境でのEmotet感染

 

2018年6月15日のmalware-traffic-analysis.netの筆者のブログ投稿に、Emotetマルスパムからの感染トラフィックの例が記載されています。この分析は、Windows Server 2008 R2のパッチが未適用なバージョンを実行するドメイン コントローラーを使用したActive Directory (AD)環境で実施されました。Windowsクライアントは、Windows Professional 7 Service Pack 1のパッチが未適用なバージョンを実行していました。

 

図6: AD環境で成功を収めたEmotet+Trickbot感染チェーン

 

図7: Wireshark内でフィルターされた感染からのトラフィック

 

図7は、192.168.200.95にあるWindowsクライアントでのEmotetからの初期感染トラフィック、続いて、同じホストでのTrickbot感染トラフィクを示しています。

 

Trickbotは、SMBを介して、Windowsクライアントから192.168.200.4にある脆弱なドメイン コントローラーに伝播しました。約20分後に、脆弱なADドメイン コントローラーはTrickbot感染の兆候を示しています。

 

図8は、Trickbotが192.168.200.4にあるドメイン コントローラーに送信されたトラフィックを示しています。

 

図8: Trickbotがドメイン コントローラーに送信された、Wireshark内のSMBトラフィック

 

結論

 

この活動は、Emotetの大量配信の増加と、Trickbotの横方向の展開機能を組み合わせています。Emotet+Trickbotの組み合わせは、より強力な感染を表しており、脆弱なWindowsホストにとっての危険性を倍増させています。

 

適切なスパム フィルタリング、適切なシステム管理、および最新のWindowsホストを装備している組織は、感染のリスクがかなり低くなります。パロアルトネットワークスのお客様は、この脅威から保護されています。当社の脅威防御プラットフォームは、EmotetとTrickbotの両方のマルウェアを検出します。AutoFocusをご使用のお客様は、EmotetおよびTrickbotタグで、この活動を調べることができます。

 

当社は、対象のインジケータを見つけてこの活動を引き続き調査します。そして、さらなる情報をコミュニティに提供し、脅威防御プラットフォームの強化に努めていきます。

 

付録A

 

2017年5月~2018年5月のEmotet Word文書のヒット数:

 

月/年: リンク - 添付ファイル - 合計

 

  • 2017年5月: 8,423 - 1,421 - 9,844
  • 2017年6月: 1,154 - 173 - 1,327
  • 2017年7月: 2,868 - 390 - 3,258
  • 2017年8月: 3,273 - 3,803 - 7,076
  • 2017年9月: 4,650 - 2,211 - 6,861
  • 2017年10月: 9,289 - 3,407 - 12,696
  • 2017年11月: 10,676 - 1,737 - 12,413
  • 2017年12月: 10,499 - 217 - 10,716
  • 2018年1月: 5,287 - 2 - 5,289
  • 2018年2月: 16,637 - 265 - 16,902
  • 2018年3月: 29,801 - 2,680 - 32,481
  • 2018年4月: 6,138 - 3,533 - 9,671
  • 2018年5月: 13,150 - 289,308 - 302,458

 

付録B

 

2018年5月のEmotet Word文書のヒット数:

 

日付: リンク - 添付ファイル - 合計

 

  • 2018/05/01: 383 - 0 - 383
  • 2018/05/02: 45 - 437 - 482
  • 2018/05/03: 43 - 150 - 193
  • 2018/05/04: 41 - 604 - 645
  • 2018/05/05: 38 - 0 - 38
  • 2018/05/06: 36 - 0 - 36
  • 2018/05/07: 218 - 711 - 929
  • 2018/05/08: 476 - 9 - 485
  • 2018/05/09: 65 - 1 - 66
  • 2018/05/10: 155 - 957 - 1,112
  • 2018/05/11: 47 - 25 - 72
  • 2018/05/12: 26 - 0 - 26
  • 2018/05/13: 45 - 5 - 50
  • 2018/05/14: 350 - 19 - 369
  • 2018/05/15: 1,274 - 325 - 1,599
  • 2018/05/16: 1,119 - 10,929 - 12,048
  • 2018/05/17: 746 - 19,311 - 20,057
  • 2018/05/18: 386 - 27,437 - 27,823
  • 2018/05/19: 61 - 270 - 331
  • 2018/05/20: 60 - 234 - 294
  • 2018/05/21: 1,632 - 9,098 - 10,730
  • 2018/05/22: 381 - 4,656 - 5,037
  • 2018/05/23: 920 - 7,050 - 7,970
  • 2018/05/24: 536 - 5,169 - 5,705
  • 2018/05/25: 481 - 4,206 - 4,687
  • 2018/05/26: 78 - 134 - 212
  • 2018/05/27: 171 - 743 - 914
  • 2018/05/28: 734 - 13,105 - 13,839
  • 2018/05/29: 1,678 - 35,909 - 37,587
  • 2018/05/30: 566 - 109,409 - 109,975
  • 2018/05/31: 359 - 38,405 - 38,764
  • 合計: 13,150 - 289,308 - 302,458

 

パロアルトネットワークス管理者ガイド日本語版

このガイドで、パロアルトネットワークスのファイアウォールのWeb管理画面の使用方法を説明します。対象は設置、運用管理、メンテナンスを行うシステム管理者向けです。 ※このページで提供する管理者ガイドが最新版でない可能性があります。最新版に関しては、製品をご購入された販売代理店にご相談ください。  
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PA-800 Series

主なセキュリティ機能: すべてのアプリケーションをすべてのポートで常時識別 • 使用されているポートや暗号化(SSLまたはSSH)、セキュリティの回避技術に関わらず、アプリケーションを識別します。 • 許可、拒否、スケジュール、スキャン、帯域制御の適用などのセキュリティ ポリシー決定の要素として、ポートではなくアプリケーションを使用します。 • 不明なアプリケーションを、ポリシー制御、脅威のフォレンジック、またはApp-ID™アプリケーション識別テクノロジの開発が行えるよう分類します。
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PA-3200 Series スペックシート

パロアルトネットワークス® PA-3200 Series の次世代ファイアウォールは、PA-3260、PA-3250、およびPA-3220 で構成されています。これらのモデルはすべて高速の インターネット ゲートウェイでの導入を目的としたものです。PA-3200 Seriesはネットワーキング、セキュリティ、脅威防御および管理のための専用処理およびメモリ を使用して、暗号化トラフィックを含むすべてのトラフィックを保護します。
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PA-3000 Series スペックシート

PA-3000シリーズの主な機能、パフォーマンスと容量、および仕様。
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PA-5200 Series

パロアルトネットワークス® PA-5200 Seriesの次世代ファイアウォール アプライアンスは、PA-5260、PA-5250、PA-5220から構成されており、高速データセンター、インターネット ゲートウェイ、およびサービス プロバイダでの導入に適しています。PA-5200シリーズは、ネットワーキング、セキュリティ、脅威からの防御と管理の重要な機能領域専用の処理機能とメモリを使用して、最大80Gbpsのスループットを提供します。
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