経営幹部にとって、今後10年間で最も困難な経営課題のひとつは、ポスト量子暗号(PQC)への移行となることが予想されています。長期的かつ理論的な脅威は明らかであるものの、直近の最重要課題は、何千台ものデバイス、アプリケーション、データストアを耐量子安全にアップグレードする数年にわたる現実的な道のりを、実際にどう遂行するかにあります。
確かに言えることは、この移行は複雑でコストがかかり、企業のあらゆる部分に影響を及ぼすということです。この難題をさらに悪化させているのが、「今収集して、後で解読する」という脅威です。国家による支援を受けている脅威アクターは今日、暗号化されたデータを吸い上げ、備蓄し、量子コンピュータがそれを遡及的に破るようになるのを待っています。これは、将来のコンピューティングの問題を、長期的な価値を持つあらゆるデータにとっての当面の危機に変えてしまうものです。
米国政府は、NISTとCISAを通じて、その脅威が現実のものであることに同意し、今年からいくつかの新しい指令を出しています。1このように、業界はその危険性に関して足並みを揃えており、移行には何年もかかるため、始めるのは今からだと理解しています。
C-Suiteリーダーにとっては、これが明確で実行可能な前進への道筋となります。
技術的問題に扮したビジネス リスク
私がお会いした主要な顧客はすでに、量子コンピューティングを遠い技術的な課題として捉えることをやめています。当然のことながら、これを自社の継続性、市場での地位、そして顧客の信頼に対する根本的なビジネスリスクと見なしています。最も脆弱なデータは、保存期間が最も長い情報です。医薬品の製剤情報、成長戦略、航空宇宙設計、政府の機密情報などがこれに該当します。
このため、耐量子安全の課題は過去のIT脅威とは根本的に異なっているのが特徴です。期限が決まっていたY2Kとは異なり、量子の脅威は遡及的です。今日盗まれたデータの損害は数年後に現実のものとなるため、不作為はリスク管理の破滅的な失敗に繋がりかねないものなのです。
C-Suiteの量子即応性フレームワーク
このような大きな挑戦には、強力で達成可能な戦略的枠組みが必要です。導入への歩みは、お客様の暗号化環境に対する率直かつ包括的な評価から始まります。見えないものを守ることはできません。したがって、企業全体の基礎となる可視性を獲得することが不可欠な第一歩となるのです。この暗号目録は、次の質問に答える包括的なものであることが求められます。レガシー暗号化を使用しているアプリケーションは?サーバーからIoTまで、どの機器をアップグレードする必要があるのか?どのデータストアが最も危険なのか?御社のサプライチェーンには、どのようなサードパーティのソフトウェアやライブラリがあるのか?組織の暗号の健康状態をMRIで検査するようなものと言えるでしょう。
アクションを伴わない可視化は、残念ながら、よく知られた脆弱性にすぎません。この状況を是正するうえで、「リプレース戦略」は悪手であり、複雑な企業にとって無駄骨に終わります。移行を成功させるには、2つの異なる能力が必要とされています。
1つ目は暗号の俊敏性であり、新しい標準が登場したり、暗号アルゴリズムが壊れやすくなったりした場合に、暗号アルゴリズムを入れ替えたり更新したりする能力です。これは、アーキテクチャを将来にわたって維持するために非常に重要とされています。
しかし、簡単に交換できないレガシーシステムについてはどうでしょうか?
2つ目の、そしておそらくより直接的な能力は、ネットワークレベルのコントロールを活用することにあります。デバイスやアプリケーションを即座にアップグレードし、ネットワークの他の部分から量子対応に見えるようにすることができます。このネットワーク ベースのアプローチでは、レガシー システムの脆弱性にコストのかかる中断を伴わずに対処することができ、次に来るもののための安全な基盤を構築することができます。
量子時代のリーダーシップ
この移行は、リードする組織と遅れをとる組織の差を生み出すものになると、弊社では予想しています。しかし、量子コンピューターが登場するまで、誰が準備できているかは誰も分かりません。つまり、技術が明るみに出るその瞬間こそが、セキュリティとテクノロジーを担うエグゼクティブにとっての決定的な瞬間であり、数十年にわたるデジタル トラストの基礎を形成するものとなっているのです。
耐量子安全戦略の成功は、ポイント ソリューションの集合体ではなく、統一されたセキュリティ プラットフォーム上に構築されることで達成できるものです。破壊的な置き換えよりも暗号の俊敏性を優先し、企業全体の深い可視化から始めることが求められます。技術的なアップグレードにとどまらない、セキュリティ体制の戦略的な進化でもあります。
量子の時代の到来は、ドーンという音と共に訪れるのではなく、今日の秘密が静かに、遡及的に解読されることにあります。従って、もはや問題は、あなたの組織が準備を整えられるかどうかではなく、そこに到達するまでの道のりをどのようにリードしているかということなのです。
完全な耐量子安全の評価はこちら。
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1 “Executive Order 2025:Strategic Mandates for U.S.Cybersecurity Resilience,” Palindrome Technologies, 2025年6月10日